カイハラ産業(株)より分けていただいたロープ染色の残糸
『ノッティング織の椅子敷』が生まれたのは倉敷。
わたしが織と染を学んだ倉敷本染手織研究所で、椅子敷はもともと帆布の製造途中に出た残糸や織りの余り糸を再利用するため始まったと聞いていました。広島に暮らすわたしが同じ県内にあるカイハラ産業さんより糸を分けていただくことになったのも、何かのご縁だと感じました。
ウールの鮮やかな発色に対し、カイハラ産業より分けていただく綿糸は淡くてやさしい色合いとなっています。多色使いしても馴染みが良く、化学染料を使っているので色褪せの心配もありません。甘撚りでやわらかな触り心地と艶を持ち合わせた魅力的な糸です。しかしながら糸自体が太いので、手への負担とつくる手間はウール以上にかかります。かといって細い綿糸だと糸が寝てしまうので、椅子敷になった時に柄がきれいに出ません。
また、残糸なので希望の色がいつも手に入るとも限らず、その都度作りながら色の組合せを考えています。
手仕事なので多くは製作できませんが、せっかくのカイハラ産業とのご縁を大切にして、今後もこのサスティナブルな綿ノッティングを夏の商品として作り続けたいと考えています。
わたしが出店のため福山市を訪れた2021年春のこと。
カイハラ産業(株)の工場長さんと出会い、そこで残糸を椅子敷に使えないかというお話をいただきました。
カイハラ産業(株)は1893年(明治26年)に備後絣の機屋として創業、今ではユニクロやリーバイスなど世界中の誰もが知るブランドのデニムファクトリーとなりました。同社は紡績から染色・整理加工までの一貫生産体制を確立し、同時に膜濾過式活性汚泥法による水質浄化や処理水の再利用など、環境問題への取組も熱心に行っています。
その後カイハラ産業(株)と相談を重ね様々な糸を試した結果、ロープ染色糸を分けていただくことになりました。
「ロープ染色」とは主にデニム生地を染める方法で、何本もの綿糸を重ねてロープ上にしたものを染料液に浸し、その後空気にさらして発色させる同社独自の染色技術です。
この工程を6~12回繰り返すことで、糸の外側はしっかり染まっても糸の芯まで染まらないため味わい深い糸の表情が楽しめます。同社では製品加工の際にどうしても出る余り糸を活用するアップサイクルで、少しでも環境への負荷を減らし、新しい価値を創造したいという想いを抱えていました。
残糸を利用してつくった綿ノッティングの椅子敷